小説

2018/10/18

みんなのストーリーズ🎁  信じてもらえないことの悲しみ⑴

優は、両親のおかしな言動に「またか・・・」と感じていた。

彼女は小学4年生。


昨日の放課後。

児童玄関前で友人達とお喋りしていると、いつもの男子がからかいの言葉と様子で

いつもの煽りをしてきていた。

なんか、いつも あ~なんだよね・・・なんでなんだろう・・・まさと君って。


優たちは、そう話してから気にせずにお喋りを続けていたが

まさと君は、ひとりからかいの言葉を大声でこちらに向け続け

ピッチング ポーズでこちらに投球のポーズを続けてくる。


うるさいな~・・・バッカみたいだよね!

優たち女子にはそう見えていた。


優は近くに落ちていた少し太めの木の枝を、まさとの方に投げた。


こないだの台風で木が倒れた時のもの。


もちろん、まさとには当たらないように!だ。

まさとに当たっていない事も、もちろん優はその目で確認済みである。


それから暫くして、その日は解散。

みんなそれぞれ帰路についた。



まさと君って先生の子どもなのに、なんだかいつもあんな風だよな・・・。

なんでだなんだろう?

まっ、別にいいけど、と話し終えてその日は解散。


翌日、学校に行くとまさとが手首に包帯を巻いていた。

病院に行ったらしい。

優は「えっ?」っと思ったが、どこかで怪我でもしたのかな

位にしか思わなかった。



いつもはうるさい、まさとも今日は何にも言ってこなかった。


次の休み時間に、2つ上の女子が優に話しかけてきた。

この人は学校中、地域の事はなんでも把握している、

優の母に言わせれば「大人の話をなんでも聞いているませている子」であった。


「まさと君、昨日、優ちゃんに木を投げられて怪我したみたいだけど本当?」



優は、固まった。

2つ上の噂好きのこの人に話しかけられた事じたいもそうだが

そんなことはあるわけがない。

だって昨日、木の枝が当たっていないのはこの目で確認済みだもの。



まさと君はプリプリしていて今日は何も話してこない。


「自分で怪我してそれを私にやられたと親に言ったんだろうか?」


優は2つ上の人にも、まさと君にも何も言えなかったし確認もしなかった。

できなかった。


昨日、一緒にいた女子たちは驚き

「大変な事をしてしまったとされる」優に対して微かに、そして確かに避ける姿勢を取った。


担任でもないひとりの女の先生が、優に木の枝を投げたのか?確認に来た。

優は、投げたけれども当たっていない事を伝えたが

女性教師は疑いの眼差しで「ふ~ん」と言って去っていった。

いつも口うるさいあの先生、どう思ったかな?


優はこういう場面でうまく言葉が出て来ない傾向の自覚がある。

「挙動不審と自分で思い込んでいる心の中」が他者にはどう映っているのか?が気になったが

その日は頑張って思いを伝えたつもりだ。


2つ上の学年の人たちや、学校中がその日はその大事件で騒然となっているように優には感じられ

一日、学校でひとりモヤモヤと不安を抱えながら

優は何も考えられずにその日を過ごした。



そして実際、その事は学校の中では大事件となった。



一緒だった女子も庇ってくれる訳でもなかったように思う。

見えていなかったのかな・・・?



学校から帰る頃には、自信があった「まさと君にはあたっていない」が

「見えていない所で当たったのかもしれない?」

「ワンバウンドして当たったのか?」

と優の自信は不安へとジェットコースターにように変化していた。


ワンバウンドなんてしないであろうに。



優は重い気持ちのまま帰宅した。

家に着いてもひとり重い気持ちのまま過ごした。

優は親に自分の事は話さない。


親にとって自分は興味のない存在だと、とうにわかっていた。


いつも忙しかった共働きの両親。

いわゆる今でいう所の情緒的なネグレクト(育児放棄)。


両親も故意にではないとしても

優は、「自分の気持ちを安心して話せる安全な大人」を

残念ながら持たずに育った。



電話がなり、母が驚き、誰かに謝っているのは気配で気付けた。

優は勘がいい。

そして優の直感通りに、母がやってきてこう聞かれた。

聴かれたというよりも言われた。


「まさと君に怪我させたんだって?」


優は、やっぱりか・・・と思いながらも

自分は木の枝を投げたけれども、ちゃんと当たらないように投げたこと、

うるさいまさとに、ちょっと威嚇の真似事をしただけであること、

そして、手には当たっていない事もこの目で確認した事を母に伝えた。


母は、怒りの表情で

当たらないようにであっても、そんなことはしたらだめな事

じゃ、なんでお前に怪我させられたとまさと君は言っているのか?

と詰問した。



優はやっぱりな・・・

と思った。

これはいつものことだ。


自分の話は聴いてもらえないし、母は自分の事よりも誰かの話を信じるであろうことを

優は理解していた。



信じてもらえない悲しみを、うまく感じられないように

自分をマヒさせる術を優はとっくに体得していた。


誰にも教えられぬままに、習得して

心(感情)と身体が繋がっていない、バラバラである自分にも

とっくに慣れていた。





自分の悲しみの感情をいちいち感じていたら

この家では辛くて生き残れないから。




大型台風が去り、青空が広がる秋の日

優が大好きな紅葉の木は、乾燥した空気の中で今年も燃えるように色付いていた。







つづく



信じてもらえないことの悲しみ  →  ★http://refreme.blog.jp/archives/54366181.html












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naomiyo929 at 22:00|PermalinkComments(0)